「AIで動画を作りたいけど、プロンプトの書き方がわからない…」 「毎回仕上がりにムラがあって、安定しない…」
画像生成には慣れてきたけれど、動画生成となると途端にプロンプトが手探りになってしまう。そんな方は多いのではないでしょうか。
動画生成AI(Gen-2, Pika, Stable Video Diffusionなど)は日々進化していますが、実はどのツールを使うにしても、高品質な動画を生み出すための「プロンプトの黄金ルール」は共通しています。
この記事では、感覚に頼らず、論理的に動画を生成するための**「被写体・動き・雰囲気」**の3大要素について、教科書的にわかりやすく解説します。
第1章:動画生成プロンプトの全体像
動画生成プロンプトは、闇雲に単語を並べればいいわけではありません。 家を建てるのに設計図が必要なように、動画にも「構造」が必要です。
最も安定する構造は以下の通りです。
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Subject(被写体): 何が映っているか
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Motion(動き): 被写体やカメラがどう動くか
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Atmosphere(雰囲気): 光、色、画質
この3つをこの順番で記述することが、AIにとって最も理解しやすい「黄金ルール」となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
第2章:黄金ルール①「被写体(Subject)」の指定
まずは映像の主役を定義します。ここは画像生成プロンプトの知識がそのまま使えます。
具体性が命
「人」ではなく「20代の日本人女性、ビジネススーツ着用」のように具体的に書きます。 動画の場合、途中で被写体が入れ替わってしまう(モーフィング現象)を防ぐためにも、特徴を明確に固定することが重要です。
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悪い例:
Man(男性) -
良い例:
Old man with a beard, wearing a hat, sitting on a bench(髭を生やし、帽子をかぶり、ベンチに座っている老人)
第3章:黄金ルール②「動き(Motion)」の指定
ここが動画生成における最大の難関であり、面白さでもあります。 「動き」には大きく分けて「被写体の動き」と「カメラの動き」の2種類があります。これを区別して指定するのがプロへの第一歩です。
3-1. 被写体の動き(Subject Motion)
被写体そのものがどう動くかです。
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自然な動きのキーワード:
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Walking slowly(ゆっくり歩く) -
Smiling(微笑む) -
Waving hand(手を振る) -
Eating(食べる) -
Running(走る ※難易度高め)
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コツ: AIは物理法則を無視しがちです。「食べる」などの複雑な動きは口元が崩れやすいため、最初は「微笑む」「瞬きする(Blinking)」などの小さな動きから練習しましょう。
3-2. カメラの動き(Camera Movement)
被写体は動かず、カメラだけが動く演出です。これだけで一気に映像作品らしくなります。
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Zoom In(ズームイン): 被写体に寄っていく。注目させたい時に。
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Zoom Out(ズームアウト): 遠ざかる。状況説明やエンディングに。
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Pan Right / Pan Left(パン): カメラを左右に振る。風景を見せる時に。
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Tilt Up / Tilt Down(チルト): カメラを上下に振る。建物の高さを出す時などに。
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Static(固定): あえて動かさない。落ち着いた映像に。
注意点: 「被写体が走りながら、カメラは右にパンして、最後にズームイン」のように、被写体の動きとカメラの動きを同時に複雑にすると、AIは混乱します。最初はどちらか一つに絞るのがおすすめです。
第4章:黄金ルール③「雰囲気(Atmosphere)」の指定
最後に、映像の世界観を決定づける「フィルター」をかけます。
映像の質を高めるキーワード
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照明(Lighting):
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Golden hour(夕暮れの黄金色の光) -
Cinematic lighting(映画のようなドラマチックな光) -
Soft lighting(柔らかい光)
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スタイル(Style):
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Photorealistic(実写のような) -
Anime style(アニメ調) -
3D render(3DCG風) -
8k resolution(高解像度)
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これらの言葉をプロンプトの末尾に加えるだけで、スマホで撮ったような映像が、一気にプロのPVのようなクオリティに変わります。
第5章:実践!黄金ルールを組み合わせたプロンプト作成
では、これまでの3要素を組み合わせてみましょう。
作りたい動画: 夕暮れの海辺を歩く女性のシネマティックな映像
プロンプト構築:
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被写体:
A young woman in a white dress walking on the beach -
動き:
Walking slowly away from camera(カメラから遠ざかるようにゆっくり歩く) -
カメラ:
Slow motion, Static camera(スローモーション、固定カメラ) -
雰囲気:
Sunset, Golden hour, Cinematic lighting, 4k
完成プロンプト:
A young woman in a white dress walking on the beach, walking slowly away from camera. Slow motion, static camera. Sunset, golden hour, cinematic lighting, 4k.
このように、要素をパズルのように組み合わせるだけで、誰でも論理的に美しい動画プロンプトを作成できます。
まとめ
動画生成プロンプトは、一見難しそうに見えますが、分解すれば「被写体」「動き」「雰囲気」の3つしかありません。
この黄金ルールを意識して、 「今日は被写体の動きを練習しよう」 「次はカメラワークを変えてみよう」 と一つずつ実験してみてください。
このルールが身につけば、どんな新しい動画生成AIが登場しても、迷うことなく使いこなせるはずです。

