はじめに
前回の記事では、Stable Audioで作る和楽器BGMと睡眠BGMが、なかなか「BGM」にならなかった経緯を書きました。最後にたどり着いたのが、Gemini(Gems)に曲を聴かせて判定してもらう方法です。
自分で聴いて「なんか変」と思っても、それを音楽の言葉で説明できませんでした。Claude CodeやClaudeに言葉で伝えても、プロンプトの語句が増えるだけで、うまく直りませんでした。
そこで、音声ファイルを読み込んで分析できるGeminiに、判定専用のGem(Geminiのカスタム設定)を2つ作りました。この記事では、その設定の中身と使い方、実際に点数がどう変わったかをまとめます。
このガイドでわかること
- 音楽判定用のGemを作るときに決めたこと(役割・評価項目・合格基準・出力の形)
- YAMATO SOULS用ともふもふ睡眠BGM用、2つのGemsの違い
- 音声ファイルを送って判定してもらう使い方
- 判定と修正で、点数がどう変わったか
- 使うときの注意点
本編
なぜGeminiなのか
当時の私の作業では、Claude CodeやClaudeには聴いた感想を文章で伝えていました。それだけでは、どこを直すべきか具体的に伝えきれませんでした。
Geminiは、音声ファイルを添付すると中身を分析して答えてくれます。そこで、「曲を聴く・崩れ方を見つける・プロンプトを直す」の3つを、Geminiにまとめて任せることにしました。
ステップ1:判定用Gemに役割と基準を設定する
Gemは、Geminiに役割や知識をあらかじめ覚えさせておく機能です。毎回同じ説明を入力せずに、指定した基準で評価を依頼できます。ただし、同じ音源でも回答や点数が変わる可能性はあります。
パソコンでGeminiを開き、サイドバーの「Gem」→「Gemを作成」へ進みます。名前とカスタム指示を入力し、必要な資料を「知識」に追加して保存します。これはGoogle公式ヘルプの作成手順で確認できます(2026年9月28日確認)。
ここで登録する知識ファイルは、シリーズの楽器構成や目標をまとめた資料です。評価したい音源は、あとでGemとのチャットに添付します。
作るときに決めたのは次の4つです。
- 役割: 「音楽の音響アナリスト兼Stable Audioのプロンプト担当」として、BGMとして使えるかを判定し、ダメなら直したプロンプトを出す
- 評価項目と合格基準: 5項目を各5点、25点満点で採点する。20点以上、かつ全項目3点以上で合格(私の制作で使っている独自基準)
- 知識ファイル: チャンネルのシリーズごとのBPM・楽器構成・避ける語をまとめたファイルを登録する
- 出力の形: 毎回同じ順番(総合スコア → 項目別の評価表 → 課題 → 修正プロンプト)で答えてもらう
指示文と知識ファイルは、Geminiに作ってもらう形で整えました。大事なのは、チャンネルで目指す音・楽器の役割・合格条件を先に決めておくことです。
出力の形を決めておくと、判定結果をそのままObsidianの修正メモに写せます。修正プロンプトも、Stable Audioの入力欄にそのまま貼れる形で出してもらうようにしました。
2つのGemsの設定
チャンネルごとに求める音が違うので、Gemも分けました。
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YAMATO SOULS Audio Critic |
Mofumofu Audio Critic |
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役割 |
和楽器BGMの音響分析とStable Audioプロンプトの修正 |
クラシック睡眠BGMの音響分析とStable Audioプロンプトの修正 |
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評価項目(各5点) |
拍の確立とリズムの推進力/和楽器らしさ・音色/3層構造と主従関係/用途に合っているか・音量の変化/終わり方・ループのしやすさ |
主役の明確さ/睡眠に向くか・刺激の少なさ/旋律・展開の抑え方/空間・質感の自然さ/ループのしやすさ |
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合格の基準 |
25点満点で20点以上、かつ全項目3点以上 |
同じ |
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原因の示し方 |
崩れ方の10型(主役争奪・SFX化・ソロ痩せなど)から特定 |
睡眠BGMのNG要素(盛り上がり・キャッチーな旋律・打楽器・高音の刺さり・強い終止など)から指摘 |
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知識ファイル |
シリーズ別(Samurai/Edo/Shrine/Seasonal)のBPM・楽器構成・Avoid: |
猫・犬・小動物の楽器構成と、入眠・浅い眠り・深い眠りのBPM・ムード・終わり方 |
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出力 |
総合スコア → 項目別の評価表 → 課題 → そのまま貼れる修正プロンプト |
同じ |
YAMATO SOULS用は「拍がはっきりしているか」「和楽器らしいか」を重く見ます。もふもふ用は「眠りを邪魔しないか」「主役の楽器が埋もれていないか」を重く見ます。
私の運用では、除外語も一つの入力文にまとめています。YAMATO SOULS用のGemは、除外語を本文末尾の Avoid: 1行に入れた形でプロンプトを出すように設定しています。
ステップ2:曲と制作条件を送って判定してもらう
使い方は簡単です。
- Stable Audioで生成した曲(WAV/MP3)をGemのチャットに添付する
- 「Edo Night Sleepの曲1(50 BPM)として作った音源です。判定してください」のように、シリーズと曲番号を添えて送る
- 判定結果を読み、不合格なら修正プロンプトで再生成する
- 再生成した曲をもう一度送り、前の指摘と聴き比べる。点数だけで決めず、自分の耳でも採用を判断する
シリーズと曲番号を伝えると、知識ファイルの中から、その曲の目標のBPMや楽器構成と比べて判定してくれます。
音声ファイルのアップロードには長さやサイズなどの制限があります。送れない場合は、Google公式のファイルアップロード案内で現在の条件を確認してください。完成した長尺動画用の音源より、まず生成した1曲で確かめると扱いやすくなります。
判定結果は、次のような形で返ってきます。
- 総合評価・判定結果
総合スコア:XX / 25点
判定:【合格(採用可能)】/【要修正】
識別情報:シリーズ|曲番号|推定テンポ
検出された破綻型:(該当する型、または「なし」)
- 項目別分析(5項目の点数と、聴いた印象のコメント)
- 主な課題点・破綻の診断
- Stable Audio用の修正プロンプト(そのまま貼れる形)
この出力例は形式を示したものです。実際の判定値は、以下の制作記録にまとめました。
ステップ3:指摘を修正に使い、結果を記録する
点数はGoogleやStable Audioの公式品質スコアではありません。私が設定した5項目に沿ってGemが返した評価です。YS-076は3曲それぞれの点数、YS-077・078は記録上の総合点のため、すべてを同じ単位として比較しないようにしています。
YAMATO SOULSの結果
YAMATO SOULS
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回 |
シリーズ |
経過 |
最終 |
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YS-074 |
Edo Night Sleep |
Gemsで5回修正 |
採用 |
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YS-075 |
Shrine & Koto Healing |
初版14点 → 再生成12点 → 10回以上作り直し |
22/25で合格 |
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YS-076 |
Seasonal(夏) |
YS-075で合格した型を使用 |
23・24・23点で全曲合格 |
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YS-077 |
Samurai Focus |
YS-075で合格した型をそのまま使用 |
22/25で合格(修正なし) |
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YS-078 |
Edo Night Sleep |
YS-075で合格した型をもとにしたEdo用の型を使用 |
22/25で合格(修正なし) |
YS-075の初版でGemsが挙げた原因候補と症状は、次の4つでした。語句と結果の因果関係を確定した分析ではなく、修正を試すための仮説として扱っています。
- 周波数の語(432Hz・528Hz)で音程が不安定になり、金属的なノイズが出る
- 否定語を本文に並べたせいで、音が痩せる
- 拍がなく、5分の途中でぼんやりした持続音になる
- sparse のせいで単音になる
直したあとの再生成でも12点でした。「拍が立ち上がらない」「琴が単発の音になる」「尺八が鳴り続けて琴を消す」という指摘です。そこから、拍の書き方を強くし、尺八を「弦の下でかろうじて聞こえる持続音」に下げて、ようやく合格しました。
この型をもとにしたYS-076・YS-077・YS-078は、修正なし、または少ない修正で合格しています。これで、YAMATO SOULSの4シリーズすべてが同じ骨組みの型で合格しました(どれもシリーズごとに1本ずつの結果です)。
もふもふ睡眠BGM(9月22日〜26日のShorts)
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シリーズ |
入眠 |
浅い眠り |
深い眠り |
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猫(MSBC-001・ピアノ) |
23点(修正なし) |
22点(修正なし) |
17点 → 24点 |
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犬(MSBD-002・アルトフルート) |
18点 → 23点 |
15点 → 22点 |
1回目の修正版で17点 → 2回目の修正で24点 |
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小動物(MSBA-003・ハープ) |
23点(修正なし) |
17点 → 24点 |
15点 → 24点 |
指摘と直し方の例
Gemsの指摘は、自分では言葉にできなかった違和感を具体的にしてくれました。
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曲 |
Gemsの指摘 |
直し方 |
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犬・入眠 |
アルトフルートの息の擦れ音(高い音域)が多い |
「温かく柔らかいアルトフルート」「低めの中音域だけで吹く」に変えた |
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犬・浅い眠り |
高い倍音が笛のように刺さる。終盤で主役が急に消え、ループでつなぐと音量に差が出る |
「とても柔らかく暗めのアルトフルート」にし、音量のバランスをそろえる指示と「終わりでフェードアウトしない」を追加 |
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猫・深い眠り |
ピアノの動きが多すぎる。終盤に旋律が出て、ループが崩れる |
主役を「まれに鳴る低い和音と長い間」に限定し、「最初から最後まで音量とエネルギーを一定に」「終わりでフェードアウトしない」を追加 |
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小動物・浅い眠り |
低音のマリンバとチェロがハープの低い弦と重なり、重たく聞こえる |
ハープを「浮かぶような柔らかいハープ」にし、低音の楽器を遠くへ下げた |
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小動物・深い眠り |
ハープが背景の弦に埋もれて、何の楽器か分からない |
主役を「一音ずつ温かく鳴って長く響く」に変え、低音のにごりを抑える指示を追加 |
今回の犬・猫・小動物の制作では、「終わりでフェードアウトしない」「最初から最後まで一定の音量」を含めた修正後に、判定が改善しました。複数の語句を変えているため、この2つだけの効果とまでは言い切れません。今はもふもふの全シリーズ共通で入れています。
直したプロンプトと点数は、毎回Obsidianのデイリーノートの修正メモに書き、効いたものは症状別の修正ログにまとめています。次に作るときは、Claude Codeがそのログを読んでからプロンプトを作ります。この記録の残し方は、Obsidianの修正・改善ログの記事にもまとめています。
使うときの注意点
- 点数はAIの判定です。 推定BPMや点数がいつも正確とは限りません。最後は自分の耳で聴いて決めています
- 1回に変える点はできるだけ1つにする。 私は1回の修正で複数の語句を同時に変えた回があり、どの語句が効いたのかまでは分かっていません
- まだ試した数が少ない。 どれもシリーズごとに1本ずつの結果です
- Gemの修正プロンプトをそのまま信じすぎない。 知識ファイルにない語を足してくることもあるので、避ける語が入っていないかは確認します
まとめ
- 音楽の「なんか変」を自分で言葉にできないときは、Geminiに曲を聴かせて判定してもらうと、原因と直し方が具体的になる
- Gemには「役割・評価項目と合格基準・知識ファイル・出力の形」の4つを決めておくと、毎回同じ基準で判定してもらえる
- チャンネルで求める音が違うなら、Gemも分ける(和楽器BGMは拍と楽器らしさ、睡眠BGMは眠りを邪魔しないか)
- 判定と修正を続けたことで、YAMATO SOULSは4シリーズすべて、もふもふは3シリーズ全フェーズで合格ラインに届いた
- 点数はAIの判定。最後は自分の耳で決め、直した内容は記録に残す
参考リンク
- Gemini アプリで Gem を使用する(Google公式)
- Gemini アプリでファイルをアップロードして分析する(Google公式)
- 前回の記事:Stable Audioの音楽が「BGM」になるまで
- YS-074で5回修正して見えたこと
公式ヘルプの確認日:2026年9月28日。採点結果・修正例は私の制作記録に基づきます。

